「モチベーション3.0」とgamification

「モチベーション3.0」 という本をご存じだろうか。大前研一氏が翻訳していたということもあって話題に上ったことも多い本なので、読まれた方も多くいらっしゃるのではないかと思う。人間の動機付けについて書かれた本で、「3.0」と書くと何か新しい概念何だろうかと思ってしまうのだが英語の原書のタイトルは「Drive」となっており必ずしも新しい概念を紹介しようという内容ではない。主に心理学の分野での過去の研究結果を現在の(ビジネスの)状況に当てはまるように説明した、というような内容の本である。

モチベーションを本来の意味で高めるために必要なことは、金銭的な報酬に代表されるような「外発的な」動機付けではなく、自分の内から湧き出てくる「内発的な」動機付けである、というのが本書の基本的な主張だ。内発的な動機付けとは何か、それを高めるためにはどうするべきか、ということが説明されている。最近の事例を交えた内容になっているため、研究成果の紹介だけにとどまらず、より実践的に捉えることが出来る点が面白い。

この書籍で紹介されている、内発的な動機を高めるために必要な要素としては次の3つがある。

  1. 自発性
  2. 上達感
  3. 目的

この3つ、Google Tech Talkの記事で紹介した内容そのものであること(意味の持たせ方、上達感・達成感の作り方、自発性の作り方)に資料を見返していて気が付いた。この講演者Sebastian Deterding氏は当然この本は読んでいるだろうから意図的だったのだろうと思う。このモチベーション3.0の本、日本語及び英語のサブタイトルはそれぞれ

“「持続する「やる気!」をいかに引き出すか”

“The Surprising Truth About What Motivates Us”

そもそもgamificationとは何なのかということが非常にわかりやすくこのサブタイトルに説明されている。gamificationについて説明された内容が、モチベーション3.0の内容と同じことを指している、ということはgamificationの本質を理解する上では大きな助けになる。gamificationとは、それを適用したサービスにおいてユーザの持続するやる気、持続するロイヤリティを引き出すための仕掛けである、ということだ。

ただ、ゲーム自体はモチベーション3.0を体現していると言えるだろうか?自発性や上達感についてはそう言えそうだ。ゲーム自体は明らかに他人から強制されてやるものではないし(※)、ゲームプレイを続けることで上達していく、達成感が得られるように基本的には出来ている。ただ、目的という点についてはどうだろうか。ゲームは何のためにあるか。楽しむためである。楽しむことが目的である間はいいが、それが持続性があるかどうか、というとどうやらそうでもなさそうである。ゲームはある程度までやる、クリアするなどの段階で飽きがくる。ゲーム以外の領域でモチベーション3.0を体現しようする「gamification」で重要になってくるのは、持続性のある「目的」をどう定めるのか、ということになってきそうだ。

※ここ、実はちょっと引っかかりがある。あるゲームをプレイすること自体を選択するのは自発的なものだが、そのゲームの中で自発性が発揮できるかどうかはゲームのデザインに強く依存するからだ。ここはgamificationにおいても考える必要のある要素だが、別の機会に考察してみたい。