「接客+ゲーミフィケーション」で顧客の熟練性と関係性を育てよう

View of store clerk measuring a child's foot/Boston Public Library/Teknitone Process by E.B. Thomas, Rt. 26, Cambridge 39, Mass

前回、「ゲーミフィケーションと接客の接点は柊家(ひいらぎや)での体験が原点だった」という記事をポストしました。おもてなしの原点に迫ることで、「顧客側にも熟練性が求められる」という、古くて新しい発想が得られたということをお話しました。これを現代のおもてなし、つまりWeb上でのおもてなしに当てはめてみると、ゲーミフィケーションの考え方を取り入れることで顧客が熟練度を高めていく過程を可視化したり、熟練度に応じた適切な情報を提示したりといったことになるかと思います。また、リアルな世界では難しい顧客同士の交流ということも、ソーシャルグラフを使うことでWeb上では簡単に実現することができます。

こうした新しい形の接客手法は、技術的には既に問題なく実践できるはずです。さらに顧客交流ということで言えば、接客というよりは「場の提供」という意味合いが強くなりますし、サービス提供者が介在する度合いもより間接的なものになっていきますので、そもそも「接客」という言葉自体が当てはまらなくなっていると言えるかもしれません。やや陳腐な言い方になりますが、「接客2.0」とでも言いましょうか。

しかし言葉がどうであれ、サービスを利用する顧客からすれば、サービスの利用体験を豊かなものにしてくれる施策があれば、自然にもっとそのサービスを使おうという気になります。そして直接的に顧客と触れ合うことがなくても、顧客の来店体験・購買体験をリッチにすることは可能なのです。

柊家の体験から転用できる要素としてはもう一つ、「自然に顧客が育つ」というものがあります。柊家が顧客に芸術的審美眼を暗に求めているとすれば、柊家に来れば来るほど、知らないうちにそうした審美眼が磨かれていく、というような考え方ですね。ともすれば「敷居の高さ」につながってしまうこの要素も、体験した僕からすれば、ある意味顧客に対する「優しさ」といっていいのではと思います。

このことをゲーミフィケーションの文脈に落とし込むと、「チュートリアル」に相当するのではないでしょうか。昨今のゲームでもチュートリアルが充実していたり複雑なルールを1つ1つ覚えていけるような作りになっていたりと初心者にやさしい設計になっているものが多く見られますが、これと同じことですね。もちろん、中には難易度を非常に高く設定したゲームも存在しますが、それらはどちらかといえばコアなプレイヤーを対象としていて、幅広い層には受け入れられにくいものになっています。ビジネスの場合においても、顧客の裾野を広げることで売上の拡大を目指したいところですから、基本的には初心者にも優しい設計にすることを選択する場合が多くなるでしょう。

顧客が育つということを具体的に言うと、例えばある特定の分野に対しての知識が増えていくことやスキルを身に着けていくこと、それに加えて、特定の製品やサービスの自分ならではの使い方や楽しみ方を見出すことなどが考えられます。

また、そのブランドとの関係性が育っていくということもそうですね。リアルな店舗の場合であれば、それは主に店員さんとの人間関係を意味するので非常に分かりやすいのですが、Webにおいて、これはどのように表現されるでしょうか? リアルの人間関係の中で考えてみましょう。顧客から見て、店員さんとの関係性が深まることでどのような変化が生まれるかと考えてみると、それは端的に言うと「個別対応をしてくれるようになる」ということになるでしょう。店員さんは頭の中で、「過去こんなものを買っていただいたから今回はこれをお勧めしよう」、「以前趣味はこうだとおっしゃっていたからこの商品がぴったりなのではないか」、「よく来ていただいてくれているから、何か特別な対応をしよう」といったことを考えながら個別対応をしているはずです。関係が長い顧客、よく知っている顧客であればあるほど、色々な発想が湧きやすくなるでしょう。

これはWebでも同じでしょう。ゲーミフィケーションでは、例えばバッジや経験値・レベルといった概念で、関係性を表現することがあります。個別の特別対応を報酬要素として顧客に合わせて提供することもあります。

さらにWebの場合は、顧客同士の関係性の構築ということもここに含められるかと思います。サイト内ソーシャルやサイト内コミュニティは、そうした場としての機能を持っています。これはリアルの世界ではあまり見かけることのない、Webならではの手法といえるでしょう。顧客同士の関係性を深めることでサポートコミュニティを発達させたり、製品開発に活かしたり、上位顧客の活躍の場を新たに設けたりといったことにつなげることができます。

このように、

・熟練性

・(顧客同士の)関係性

の2つの観点で顧客を育成するということを目指した接客の実現はWebならではだと思いますしWeb上の接客のあるべき姿であると思いますし、特にゲーミフィケーションが得意とする領域でもあります。楽しみながらサービスを利用した結果として熟練性と関係性を備えた顧客が育っていけば、購入回数などのビジネス的指標でも、自然と成果が出てくることでしょう。