ゲーミフィケーションには応用が難しい!?:「家族」「ロマンス」欲求の考察

さて、今回の欲求は難解です。家族とロマンスは果たしてインナーリワードとしてどのように考えることが出来るのでしょうか。また、果たしてゲーミフィケーションの設計に活かすことが出来るのでしょうか?

 

7)家族

 「自分の子供を育てたいという欲求」が家族の欲求と説明されています。 また、リースはこれは「何かを育てたいという普遍的な欲求とは異なる」とも説明しています。家族とはもっと対象が狭く、また深いものであるというのがリースの主張です。子供を育てることにやりがいを感じる、子どもと過ごす時間が長い、といった特徴が家族欲求の強い人を表現します。

 この欲求については子供が成長したことが実感できる様々な瞬間にその満足を感じることができそうです。例えば出来なかったことが出来るようになった時、子供から育ててくれたことを感謝された時、あるいは独立した時、場合によっては孫が出来た時にもこうした満足感を得ることができるでしょう。

 こう考えてみると、インナーリワードとして機能しそうなものとしては成長の記録を写真や動画に残すこと、あるいは子供からのプレゼントや感謝の言葉といったものがありそうです。なるほど、運動会で熱心に動画を撮るわけです。成長の記録を残す、あるいは将来振り返ってそれを見るというのはインナーリワード性の非常に強い行動なわけですね。

 ゲーミフィケーションを考える上で、自分の子供が直接的に関連するというシーンはかなり限定的になります。応用可能なサービスは狭くなりますが、子供向けの商品やサービスを提供しているのであればこうしたインナーリワードを使わない手はないでしょう。

 また、同時にリースは子供が独立した後には、例えば留学生や親戚の子供を預かることでもこの欲求を満たすことが出来るとも説明しています。つまり、実の子供でなくても擬似的にそれに近い体験をすることで欲求をある程度は満足させることが出来ることになります。この場合、冒頭では否定されていましたが「何かを育てたい」という欲求にある程度置き換えが出来るのではないでしょうか。

 もちろん実の子供でなければその分欲求の度合いは小さくなるでしょうし、また誰にでも有効なものというわけでもなくなるかと思います。ただ育成要素というのはゲームでは比較的よく見られますし、同様の要素をサービスの中に取り入れることも考えやすいのではないでしょうか。何を育てることにするのかはもちろんサービスによって異なりますが、インナーリワードとしては先ほど考察したのと同様な成長の記録、成長度合いの可視化、育てた対象からのプレゼントや感謝の表現、十分に育った後は独立し離れていくことなどが考えられます。

 完全にバーチャルな育成を考えることもできますが、作り上げるのに相当なコストがかかってしまいそうですから必ずしもゲーミフィケーションには向かないかもしれませんね。

8)ロマンス

 さあ、これは難しい。「セックスや美しいものを求める欲求」と説明されています。化粧をしたりなど自分をキレイに見せようとすること、デートに誘ったりプレゼントを贈ったりすることもこれに当たる行動で、相手がその気になってくれれば欲求が満たされることになります。また美、芸術、音楽などを愛でることもこの欲求の充足になるとのことです。

 単に美しいものを求めるということであれば、美しいものを見たり聞いたりすることでこの欲求が満足されることになりますが、セックスなど相手が必要な場合はそうはいきません。「相手がその気になってくれること、あるいはその気になってくれそうと思えること」でもある程度欲求が満足されそうですし、もちろん「実際にセックスをすること」でも満たされるでしょう。ただ下世話な話ですが、このロマンス欲求は精神的に満たされればいいのか肉体的に満たされればいいのかは皆さんにも伺いたいところです^^; 「人によって違う」という答えになるんだろうと思いますしもちろん両方満足するに越したことはないでしょう。

 ただ、インナーリワードという観点で考えると、残念ながら肉体的な満足という点ではほぼゲーミフィケーションに取り入れられる要素はなさそうですね。いや、理論的には取り入れられますが該当するサービスが極めて限定されます・・・すいません、これ以上掘り下げるのは止めておきます。

 美を愛でるということだと、何かしら美しいものを見た・聞いた時にその対象を何かの形で残しておければインナーリワードとしては有効そうです。また相手がいる場合だとこちらに関心を向けてくれていることがわかったり、それが明らかになった瞬間だったりはインナーリワードとして考えられるでしょう。

 ただやはりゲーミフィケーションとして考える際には美しさ・美が関連するようなサービスに限定されてしまいますね。また、ソーシャル性を考える際に異性とのやり取りの中で関心の度合いを可視化したり、何かしら関心があることを感じさせるような演出をしたりといったことは仕掛けとしてあり得るのかもしれません。難しいのはこちらに向けてしまうと出会い系の要素が色濃くなってしまい、本来のサービス提供者の意図と異なる使われ方になりかねないことです。

 全体的に、ロマンスの欲求は残念なことにゲーミフィケーションとの相性はあまりよくはなさそうですね。もし「こういうやり方がある!」というアイデア思いつかれたかたがいらっしゃれば是非コメント欄などで教えていただければ嬉しいです。

 今回の欲求は応用できる範囲がかなり限定されてしまい、ゲーミフィケーションに活かすのが少し難しそうなものでした。考えてみると当たり前ではありますが、すべての欲求がゲーミフィケーションを考える上で当てはまるわけではないということが言えそうです(次回に控えている食や運動の欲求も応用が難しそうですね)。

 

 

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参考文献:

本当に欲しいものを知りなさい―究極の自分探しができる16の欲求プロフィール

このシリーズで探求する人間の欲求一覧:

  1. 独立:人に頼らず自力でやりたいという欲求
  2. 好奇心:知識を得たいという欲求
  3. 秩序:ものごとをきちんとしたいという欲求
  4. 貯蔵:ものを集めたいという欲求
  5. 誇り:人としての誇りを求める欲求
  6. 理想:社会正義を追求したいという欲求
  7. 家族:自分の子供を育てたいという欲求
  8. ロマンス:セックスや美しいものを求める欲求
  9. 食:ものを食べたいという欲求
  10. 運動:体を動かしたいという欲求
  11. 安心:心穏やかでいたいという欲求