ゲーミフィケーションの実際:怪盗ロワイヤルのソーシャルアクション

ゲーミフィケーションの実際:「釣りスタ」のソーシャルアクション

ゲーミフィケーションの実際:釣りスタの課金アイテム

の2つの投稿において、ゲーミフィケーションというレンズを通して釣りスタというソーシャルゲームを眺めてみると一体どのように見えるのかということを考えてみた。さすがに人気を長らく保っているソーシャルゲーム、ソーシャルの要素が非常にうまく活用されていることがわかった。また、課金をするユーザ心理がどのようなものであるかについてもおおよそうかがい知ることが出来た。ゲーミフィケーションの概念自体はアメリカで生まれたものであり、その発想の根本はfacebook上でのソーシャルゲームを参考にしたところが大きい。ただ釣りスタの例をみる限り、その考え方を日本のソーシャルゲームあるいはモバイルという領域に当てはめた時にも十分に機能する概念であると言えそうだ。それだけではなく、日本人向けあるいはモバイルという領域において具体的にどのような要素が機能するのかということにおいても興味深い気付きがあった。チームプレイにおいて、「周りに迷惑をかけたくない」というような心理の働き方は、ステレオタイプ的な思考かもしれないが、非常に日本人的な心の動きのように思われる。

こうした要素をゲーム以外の領域でどのように活用していくべきか、考察を深めていきたいのだが、その前にもう1つの代表的なソーシャルゲーム「怪盗ロワイヤル(以下怪ロワ)」についても同様の分析をしてみたい。グリーと激しい競争を繰り広げているモバゲーで最初に始まった本格的なソーシャルゲームが怪盗ロワイヤルだ。約1年半前に始まり、現在でも多くのユーザが楽しんでいる。ミッションクリア型、いわゆる「5押しゲー」のモバイルソーシャルゲームの原型だ。「5押しゲー」とは、フィーチャーフォンの「5」ボタンにショートカットキーが割り当てられているため、5を押すことだけでミッションをどんどんクリアしていくことが出来るということから言われるようになった言葉である。

このゲームは、自身が怪盗となって様々なお宝を集めるというゲームである。ユーザは与えられるミッションをクリアすることや、他のユーザとのバトルを通じてお宝を集めていく。このゲームで特徴的なのは、他のユーザにバトルを仕掛けることで、お宝を奪うことが出来るという要素だ。この要素があるため、怪ロワには釣りスタで用意されているチームあるいは協力するという概念はなく(あるいは非常に少なく)、基本的にユーザ同士は争い合う「敵」として認識されることになる。また、このゲームには「行動力」に相当する概念が用意されており、「手下」と呼ばれる。ミッションに挑戦する、バトルを仕掛ける、といったゲーム進行のための行動をするたびにこの行動力が消費され、なくなると行動を取ることが出来ない。時間が経つと行動力(手下)は回復するため、一度に進行できる量は限られているがマメにアクセスすることでゲーム進行を早めることが出来るようになっている。

怪ロワに用意されているソーシャルアクションは次のとおりである。

  1. 仲間に誘う
  2. マイページのフィード
  3. ウィンク
  4. プレゼント
  5. ほしいものリスト
  6. バトル
  7. ボス戦にて仲間を呼ぶ
  8. アイテム交換
  9. プロフィールページ

やはり釣りスタに比べるとチームの概念がない分、ソーシャルアクションの幅もやや単調に感じられる。それぞれ、どのようなアクションかを見ていってみよう。

1.仲間に誘う

怪ロワにおける仲間も、既存のソーシャルグラフに関わらずゲーム内のメンバーであれば誰でも仲間にすることが出来る。仲間を増やすと自分のパラメータを向上させる事が出来る。「チームで何かをする」という要素はこのゲームにはないので、仲間を増やしていくインセンティブはそれほど強くはない。

2.マイページのフィード

仲間の怪盗の活動(称号の獲得など)はマイページ上にフィードとして表示されるようになる。また、他のユーザからのアクションもフィードとして表示される。攻撃された時、仲間になった・申請拒否された・仲間から外されたとき、応援依頼が来たとき、などがフィード対象となっている。特に攻撃を受け負けているとお宝を奪われている可能性が高く、つい気になる要素となっている。

3.ウィンク

ウィンクをすることで、連携ptを貯めることが出来る。一定量の連携ptを使うことで自身の行動力を回復させたり、バトルで有利な要素が使えるといった特殊なアクションを発動させることが出来る。ウィンクをする際には同時にコメントを残すことも出来るため、仲間への挨拶と同様に使われ方をすることもある。同じユーザに1日にウィンク出来る回数は制限がある。また、モバゲー友達(怪ロワ仲間かどうか、ではない)になっているともらえる連携ptが増える。

4.プレゼント

自分の持っているアイテムやお宝を他のユーザにプレゼントすることが出来る。プレゼントは怪ロワ上での仲間にしかすることが出来ない。釣りスタの場合は、プレゼント専用のアイテムが割と頻繁に入手するなど、贈るきっかけがゲームから与えられるのだが怪ロワの場合はそのような機会は提供されない。

5.ほしいものリスト

仲間からプレゼントして欲しいものをリストに挙げておくことが出来る。ただ、これは私がやり込んでいないだけかもしれないが、どういうタイミングで使うインセンティブが生まれるのかがわからない。

6.バトル

怪ロワ一番のソーシャル要素といえばこのバトルになるだろう。バトルに勝つとお宝をユーザから奪うことができる。しかも自分が集めたいお宝を持っているユーザを簡単に検索することが出来るため、完全に狙い撃ちになる。バトルを仕掛ける際には相手ユーザを選ぶのだが、相手のレベルやパラメータなどが見えるようになっており自分が勝てるユーザを探すことが容易にできるようになっている。そのため、バトルは基本的に仕掛ける側が圧倒的に有利である。またバトルに負けると仲間に応援を頼むことが出来るようになっている。応援を頼まれた仲間が勝利すると、応援を頼んだ側にもお金やお宝が手に入る。

ただ、自分が守りたいお宝には「ワナ」を仕掛けることが出来るようになっており、その場合はバトルを仕掛けた側が負けてしまう。ワナがかかっているかどうかはわからないようになっている。ただ、1つのお宝に設置できるワナの数は決まっており、数回連続してバトルを仕掛けられればワナはなくなってしまう。お宝には「シリーズ」というグループの概念があり、シリーズをコンプするとそれ以降はそのシリーズのお宝は奪われなくなるのだが、収集中のお宝は奪われる対象となる。特にレア度の高いお宝を持っている場合は守るためにどうしてもワナを仕掛けざるを得ない心情になっていく。また、あまりにもレベルが下のユーザにバトルを仕掛けると警察が登場し強制的に負けることになる。

7.ボス戦にて仲間を呼ぶ

仲間が役立つことを実感できる数少ない要素がボス戦だ。ミッションを一定クリアすると、ボスが登場する。ボスを倒すことで新たなミッションが解除され、集められるお宝も増える。ボスには一人で挑むこともできるが、仲間を2人まで一緒に戦ってもらうことができる。1人で戦うより3人で戦う方が圧倒的に強く、スムーズにゲームを進行させるためには必須と言ってよい。呼ばれた方も特にマイナスの影響もない。ただ、これは仲間さえいれば可能なアクションであるため厳密にはソーシャルアクションとは言えないかもしれない。

8.アイテム交換

ユーザ同士でアイテムを交換することが出来る。交換をお互い安全に行うために一時的な預かり場所が用意されており、双方がその預り所にアイテムを預けた時点で交換が成立するようになっている。交換出来るのはアイテムのみで、お宝を交換することは出来ない。「アイテム交換」という要素があることで、「お返し」が成立している釣りスタと比べると、ゲームの遊び方あるいはプレイヤー層に大きな差があることが感じられる。

9.プロフィールページ

過去の戦歴、持ち物、お宝、勲章などを見ることが出来る。他のユーザに自慢をするような工夫を施せる余地は特に用意されていない。


以上が怪ロワで用意されているソーシャルアクションである。このように見ていくと、釣りスタで用意されているソーシャルアクションとは根本的な発想が大きく異なっていることが分かる。釣りスタでは、「ゲーム進行をよりスムーズにし、特に上級者に対してはゲームの目的をチームへの貢献に切り替える」「自己表現をする」「異なるプレイヤータイプのユーザがそれぞれ活躍の場がある」というような役割をソーシャルアクションが果たしており、チーム同士で対戦するという要素はあるものの、基本的にはユーザ同士が協力し合うということを促すようにソーシャルアクションが設定されている。

一方怪ロワでは、上記9つのソーシャルアクションの全てが、積極的な協力を促すような働きを持っていない。これらのうち、、敵対的ではなくかつ主体的にユーザに働き掛けるソーシャルアクションは「仲間に誘う」「ウィンク」の2つだが、いずれも基本的には自分にとってのゲーム進行を有利にする(パラメータ増、ボス戦に有利、連携ポイント稼ぎなど)という目的で使われる。これらも協力的な要素があるとは言い難い。「gamificationの理論的背景:自己決定理論」で触れたように、これらのアクションは完全に外発的な動機付け、報酬目的でのソーシャルアクションでありモチベーションの維持に有効に働くとは考えにくい。

むしろ、怪ロワでは積極的に敵対的に働くようなソーシャルアクションである「バトル」を中心にゲームが組みたてられているため、「協力」という要素が機能しにくいゲームデザインとなっている。そのため、他のユーザに対して自慢をするような要素が成立させづらい。同様に、プレイヤータイプ別で見ていくと、明らかにキラーに非常に向いたゲームであり、ソーシャライザーには全く向いていない。アチーバーやエクスプローラーは一人プレイとして楽しめるようには出来ているが、ソーシャルアクションとして彼らが活躍できるような要素は盛り込まれていない。

このように見ていくと、同じ「ソーシャルゲーム」というジャンルで括られるものの、釣りスタと怪ロワは全く異なる性質を持つゲームであることがわかる。釣りスタはソーシャルの要素を非常にうまく活用しユーザの活性化をもたらすことに成功しており、ゲーミフィケーションを考える上でも学ぶ点が多い。「ソーシャルゲーム」というこれまでのコンシューマ系ゲームの概念とは全く異なるゲームとして成立していると言える。怪ロワはソーシャル要素の活用という意味ではユーザ同士のバトルにフォーカスが強く当たっており、コンシューマ系ゲームでも存在していた「ユーザ対戦」の概念をソーシャル性を持たせて進化させたもの、というように見ることが出来る。

この違いは、引き付けるユーザ層の差異ということで出てくると思われる。釣りスタはソーシャライザーが活躍できるソーシャルゲームであり、怪ロワはキラーが活躍できるソーシャルゲームである。ソーシャライザーが活躍できるゲームというのは、SNS登場以前にはあまり存在していなかったため、新たなユーザ層をゲームの領域に連れてきていると言えるのではないだろうか(検証が非常にしづらい仮説だが)。さらに言えば、キラーがキラーであることを許されるのはゲームがそのようなデザインになっているからという理由が大きい。ゲーム以外の領域において、キラーが活躍できるような場というと、例えばオオークションのようなサービスや、あるいはWootのような在庫限定型の商品販売サービスなどであろうか。ゲーミフィケーションの目的はユーザロイヤリティの向上にあるが、サービスの種類によっては競争心をあおることがサービスの活性化につながるようなケースもあり得る。そのような種類のサービスの場合は怪ロワでの実施施策は参考になる点が多そうだ。

「釣りスタ」「怪ロワ」の2つのソーシャルゲームを見ていくことで、ゲーミフィケーションとしては、「協力」に相当するソーシャル要素を利用しているソーシャルゲームからは学びが大きいことがわかった。また、「協力」要素を使っているソーシャルゲームは、いわゆる「ゲーム好き」のユーザとは異なるユーザ層を引き付けており、同時にゲームの種類もコンシューマゲームとは大きく異なったものになっていることも見えてきた。2つのソーシャルゲームを分析してみて感じたこととして、実際のゲームからの学びは非常に有意義だというも実感することが出来た。こうなるとUSとの比較もまた興味が出てくる。

最後に一言エクスキューズを。本稿で述べているのはあくまでゲーム以外の領域にソーシャルゲームの持つ要素をどのように活かすといいだろうか、という視点での話である。ゲームそのものの良し悪しなどについて論評するものではないが、表現上誤解を招くようなことがあればそれは私の文章力の拙さによるものであり、どうかご容赦頂きたい。