ゲーミフィケーションは利用者にとって「意味のある」行動を促進するためのもの

ゲーミフィケーションという言葉を色々な場面で耳にする・目にする機会が増えてきていますが、ゲーミフィケーションとはなんのためのものでしょうか?利用者の行動を促進するためにゲームで用いられている要素を使うというのが言葉上の定義になりますが、基本的には結果として利用者の行動にいかに影響を与えられるかがゲーミフィケーションを活用する狙いになります。

例えばこれは先日のゲーミフィケーションサミットでも見られた場面なのですが、ある登壇者がアングリーバード(※スマートフォンゲーム。世界中で1億回以上ダウンロードされるなど非常に人気があります)に登場するブタの人形を手に持ち、会場に向かって「ブタの鳴き声を真似た人にこの人形をあげます!」と言った所、大勢の人がブタの鳴き声を真似、会場に人形を投げ入れるということがありました。

ゲーミフィケーション的な観点でこれを眺めるとどうなるか。

  • 報酬:ブタの人形
  • 促進した行動:ブタの鳴き声の真似

となります。この例は報酬が完全に外発的なものですからこの行動の促進自体を長続きさせることは難しいですが(誰もブタの鳴き声の真似をし続けたいと思わないですよね!)、ともあれ報酬を設定することで普段は人前では絶対にしないであろう行為を多くの人にさせる、という結果を生み出すことが出来ました。ゲームの要素を使うことで、こうした行動の変化あるいは促進という結果をより効果的に生み出すことが出来るというのがゲーミフィケーションの背景にある考え方です。

行動を促進させるという効果も、長続きする場合とそうでない場合があります。ブタの人形ですと長続きさせることは難しいですが、仮に動物の鳴き声役を専門にする声優さんあるいはその卵という立場の人がいた場合はどうでしょうか?ブタの人形がなくてもこうした人にとってはブタの鳴き声を真似ることは、自分のキャリアを磨くための数多くある1つの訓練として位置付けられるため、自身の目的と合致します。動機がより内発性の強いものへとなります。こうした人にとっては、その真似がいかにうまく出来たのか、あるいはそのためにどのくらいの訓練を積んだのか、などをゲームで使われている要素を使ってフィードバックを受けることでより効果的に訓練を積むことが出来るようになります。

これはかなりレアなケースだと思いますから、大半の人にとってブタの鳴き声の真似を継続的に行うということは難しいことでしょう。外発的な報酬を使うことで、こうした行動でも無理やりに、かつ一時的にであれば起こすことができます。また他の様々なゲーム要素、例えばランキング「ブタの鳴き声の上手な人」を設けたり、うまかった人にはバッジを付与したりといったことも盛り込むことで一時的に行動を促進することはできるかもしれません。しかしながら、やはり継続させることは難しいということは容易に想像がつきます。

ゲーミフィケーションは行動の変化を促すためのものですが、そもそもやりたくないことはやる意味がわからないことをさせ続けることは出来ません。これは企業と顧客の関係性の中でも同じことが当てはまります。ゲーミフィケーションのデザインを実際に進める上で注意しないといけないのはまさにこの点になります。ゲームとしてのデザイン、ゲーム要素の使い方がいかに秀逸でも、ここがずれていればなんの効果も発揮しないことになります。

ゲーミフィケーションが、心理学や行動経済学の観点からも関心を持たれているのはこういった点に背景があります。本来の意図としてのゲーミフィケーションとしては、むしろバッジなどを含めたエンターテイメントとしてのゲームデザインは表層的なテクニックにとどまります。本来の意図を理解してそうしたテクニックを使って初めてゲーミフィケーションが有効に機能します。実際にゲーミフィケーションの導入にあたってはこの点を押さえておくと失敗が減ると思います。是非頭の片隅に置いておいて下さい^^