ゲーミフィケーションをサービスに取り入れる上で大事なこと

ゲーミフィケーションを実際のサービスに取り入れることを考えておられる方もいらっしゃると思います。その際に何が一番大事なことになるでしょうか?ゲーム要素をサービスに取り入れればゲーミフィケーションは成功するのでしょうか。決してそういうことはありません。よくある誤解の1つに、バッジやレベルの仕組みを導入すればゲーミフィケーションだ!というものがありますが、表層的なゲーム要素の取り入れは結果として成功しないでしょう。

とにかくバッジを付与するようなゲーム要素の取り入れ方をした場合、最初は物珍しさもあって利用者の継続率が上がる効果は得られると思います。バッジの意味が利用者にとってそれほど感じられないようなものであれば「我にかえる」時が来ます。つまり「あれ、そもそもなんでこのバッジ集めてたんだっけ。何が嬉しかったんだっけ」と感じる瞬間です。こうなった瞬間に利用者はそのサービスを継続するヤル気を失ってしまいます。

こうならないために、何に気をつければいいのでしょうか?我に返ってしまうということは、利用者は本来はその行為・サービスの利用に対してそれほど魅力を感じていない、価値を感じていないということを意味しています。「何をやってるんだっけ」と感じてしまうということは、価値を感じていないのに無理やりゲーム要素を使って短期的に動機付けていたということになります。

Nike+を例にとると、そもそも利用者は「走り続けたい」「走ることで健康を維持したい」「体力を付けたい」などといった目的を持って始めているはずです。このような目的は本来のサービス利用によって提供される価値であり、利用者にとっても価値のあること、意味のあることです。ですからこの行為を継続するためにゲーム要素を取り入れても、我に返ることはない。自分の中で利用する意味が明確になっているからです。

先日、ある場でこのような話をしていた時に「Nike+のようなサービスの場合でも、いつのまにかバッジをもらうことが目的化していたり、友達に勝つことが目的化することがあると思います。それは動機付けとして正しくなくなってしまったということではないでしょうか?」という質問をいただきました。

非常にいいご指摘だと思います。バッジの獲得や友達に勝つという目標自体は、そもそものNike+を利用している目的とは直接的にはつながらない、短期的な動機付けのためのものです。ここで重要な点は、「そもそもの利用目的」と「目の前の短期的な目標」はわけて考えることが出来るということです。

目的と目標という、混同しやすい言葉を使っていますがこの2つの意味する所は明確に異なっています。目的は現実世界では抽象度が高く、達成判断が必ずしも明確ではなく、あるいはなかなか達成できないようなものをイメージしています。通常のゲームであれば大体クリアするという状態がありますので「世界を救う」「大魔王を倒す」などがゲームの目的になりますが、現実世界では「英語が上達する」「健康になる」といったものをイメージして下さい。目標とは、目的に近づいていくために1歩1歩登っていく階段の1段1段に設定されるようなイメージです。英語が上達するために、今日は単語を10個覚えることを目標にしよう、というものです。

Nike+においてはそもそもの利用目的、例えば「体力をつける」という目的はある意味非常に遠大で、いつまでたってもどこまでいっても達成出来たかどうか明確な基準があるわけではありません。道のりが遠すぎるといかに正しい目的を設定しても動機が継続されにくいのですが、短期的な目標「バッジ取得」「友人に勝つ」というような達成が明確に判定できるようなもの、あるいは具体的な行動がすぐにイメージできるようなものがあることで動機の継続がしやすくなります。

大切なことは、この1つ1つの具体的な目標をクリアしていくこと自体が、当初の目的に近づいていくことにもなっているということです。これが実感できるようにゲーミフィケーションのデザインがなされていれば「我にかえる」ということは起こらないはずです。ここに気をつけてゲーミフィケーションを取り入れてみて下さい。