gamificationとゲームニクス理論

「ゲームニクス理論」というものがある。立命館大学映像学部のサイトウ教授が提唱している理論で、主にゲームのUIに焦点を当て、例えば説明書がなくとも簡単に操作方法や進め方をユーザに理解させるようなノウハウを体系化したものである。Web上で見つかる資料としては下記のスライドがある。

また著書も出版されている。

ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則 (幻冬舎新書)

ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる

著書中の記載から抜粋する。

ゲームニクスとは、「使いやすく、使い込める」UIを開発する技術の総称です。

①直感的な操作性を実現する(誰でも、マニュアルを読まなくても使い方がわかる)
②段階的な学習効果を実現する(誰でも、いつの間にか機能を使い込めるようになる)

また、その要素として説明されているのは以下の4つ。

・ゲームニクス理論の4要素
①直感的なUI
②マニュアル不要の操作理解
③はまる演出と、段階的学習効果
④ゲームの外部化

詳細の説明はこのスライドあるいは著書を読んでいただくとして、基本的な考え方はこれまでgamificationという文脈で説明してきたことと重なりが大きい。フロー理論や自己決定理論といった心理学的な側面からのアプローチは見られないものの、UIにフォーカスを置いた体系化という点でより具体的でわかりやすい印象をうける。

特に、初期段階のユーザをひきつけるためにはどのような作り方を心がけるべきなのか、という点では有益な知見が得られる。実際にWebのサービスにgamificationの適用を考える上で、エントリーユーザをどのようにその仕掛けに乗せていくのかということが非常に重要になる。

これは現在進行中のプロジェクトでも感じることだが、ある程度仕掛けを理解し楽しんでくれるようになったミドルユーザをヘビーユーザにするよりも、エントリーユーザをミドルユーザにすることのほうが難易度が高い。特にTVゲームと違うところは、TVゲームは最初にゲームソフトを買うこと自体にお金を払うことである。そのため、エントリーユーザでも一定努力してゲームに入り込もうと頑張ってくれる。Webの場合はgamificationの仕掛けを使うことにお金が発生するわけではなく(これはソーシャルゲーム全般にも言えることだが)、完全にユーザの気分次第となる。

そのため、「よくわからないなあ」と思われた瞬間に、ミドルユーザに持って行く機会を失うことになる。それをいかにして防ぐか、エントリーユーザをミドルユーザに持っていく率をいかに高めるのか、そのための手法としてゲームニクス理論は有用だ。

むしろ、コンシューマゲームの分野は日本が過去リードしてきたという背景を考えれば、こうした理論は日本でこそもっと発展しても良いはずである。実際、この理論自体が提示されたのはスライドや著書の日付を見ると2007年頃のことである。

ただ、これは私の勉強不足に過ぎないのかもしれないが、gamificationについて興味を持ち知見を深めようとして初めてゲームニクス理論にたどりついたというのも正直なところだ。業界的に職人芸を理論体系化することを好まないのか、学術的に「ゲーム」というものが受け入れられにくいのか、なんとなくそんな気もしなくはないが、勿体無いという気がしてならない。2007年以降、著者の本の出版などは見当たらずその後どのような展開になったのか追いかけることが出来ていないが、Webあるいはソーシャルの文脈においてこの理論が更に発展を遂げていることを期待したい。