Gamification By Designについてのやり取りについて

ゲーミフィケーションサミットを主催している人物でもありこのブログでも何度も取り上げているGabe Zichermann氏の最新の著書、“Gamification By Design”について批評するブログが投稿されています。投稿したのはGamification Research Networkというアカデミックな領域の人たちが中心となって立ち上げている団体に所属しているSebastion Deterding氏。

批評ブログ自体はこちら:”A Quick Buck by Copy and Paste”、直訳すると「コピーアンドペーストで手っ取り早く金儲け」という感じです。
こちらに対し、出版元のオライリー社CEOであるTim O’Reilly氏がGoogle+上で意見を表明。
こちらに対して、Sebastianが見解を表明。
また、著者であるGabe自身もブログ上で見解を表明。
こちらに対してもSebastianが見解を表明。
さらにそれに対してGabeの反応がこちら。
第三者によるクイックサマリーが別に。

Sebastianは、自身がGamification Research Networkの中心人物の一人であることからもわかるように、ゲーミフィケーションの考え自体に否定的であるわけではありません。むしろ、研究テーマにしているくらいですからその可能性を感じて取り組んでいる人物です。彼が批判していたのはGabeの書籍自体に対してのことで、過去の研究成果や理論の理解が不十分であることや、その結果ゲーミフィケーションの応用に誤解が生じることで本来得られるはずの成果が得られなくなってしまうことへの懸念ということから発しているようです。また、他者の成果物の引用について参考書籍としてしっかりリファレンスされていないことも触れられています。

僕自身が先日出版させて頂いた「ソーシャルゲームはなぜハマるのか」と、上記Gabeの”Gamification By Design”は、2冊ともご覧になられた方はわかると思いますが内容が重なっている点も多々あります。率直に言って、1月にサンフランシスコでGabeが開催したゲーミフィケーションサミットで得た知見は本書籍執筆にあたり非常に有益でした。2日目にAmyが主に講義を担当していたワークショップは大変参考になっています。

「ソーシャルゲームはなぜハマるのか」を書くにあたっては、まだ国内に類書がないことから、特にゲーミフィケーションというコンセプトをその登場の背景からなるべく丁寧に説明し、表面的な理解で応用されるようなことがなるべく少なくなるようにという思いがありました。ゲーミフィケーションは非常に奥深く有用なコンセプトであり、単なるバッジやポイントの導入、つまり個々のゲームメカニクス要素をはめこむだけのことではないということをどのように伝えていくかは、僭越ながら僕自身の非常に重要なミッションだと考えています。

Gabeとは今回のゲーミフィケーションサミットでも打ち合わせる場を作り、日本での展開について協議していこうと話をしました。彼が現在取り組んでいるようなゲーミフィケーションについての教育プログラムを国内で実施することも十分あり得ますし、市場を盛り上げていくためには必要なことだと考えています。先週のワークショップに参加して、実際に多くの案件を経て蓄積された知見は日本でも有益だと強く感じましたし、スピーディに動くためには同じ事をゼロから日本だけでやるよりは、お互いにナレッジを共有したほうがよりよい成果を素早く出すことにつながるだろうというのが今の僕の正直な考えです。

僕自身は良くも悪くも日本人であり、SebastianやGabeが使うようには英語は使えません。英語での書籍を出すことも出来ていません。そのため、直接的に今回の批判の矢面に立っている立場では現時点ではありませんが、あり得たあるいは今後国内でもそれはあり得る立場であることに変わりはありません。批判が怖くないといえばウソになりますが、今までにないコンセプトの発展を推し進める人間の責任を改めて強く感じると共に、オープンな姿勢でゲーミフィケーションの理解と有用性を高めることに取り組んで行こうと思ったのが今回のやり取りを見ての感想でした。

なお、「ソーシャルゲームはなぜハマるのか」では出典元は記載し参考書籍の欄にひと通りまとめているつもりでいますが、もし漏れなどあれば是非ご指摘ください。重版時などに追記する機会があればそうしようと思いますし、なければこの場を借りて追記させて頂きます。また、引用している特に心理学に関する諸理論について、理解が浅いこともあるかもしれません。こちらもお気づきの点あれば是非率直にご指摘ください。