今回は、8/2に開催され、Gamification.jpでも告知していた、
「ゲーミフィケーション導入ワークショップ」の当日の様子についてレポートしたいと思います。
ワークショップの概要はこちらのページからご確認ください。
講師:『ソーシャルゲームはなぜハマるのか』著者 深田浩嗣
当日は弊社ゆめみの代表取締役社長であり、
Gamification.jp編集長の深田が講師を務めました。
『ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足』
『ゲームにすればうまくいく ゲーミフィケーション9つのフレームワーク』などの著書があり、
本サイトではゲーミフィケーションに関する考察を中心に記事を執筆しています。
ユーザーの「動機」が鍵 ~利用者・目的~
今回のワークショップは、深田が『ソーシャルゲームはなぜハマるのか』の中で提唱した
「ゲーミフィケーションフレームワーク」に沿って行われました。
ゲーミフィケーションやフレームワークについて一通り説明した後、
まずはユーザーの動機にフォーカスを当てて話が進んでいきます。
深田は、ゲーミフィケーションの設計においてはユーザーの動機に対する
正しい理解が重要であり、さらに動機を理解するためには
ユーザーがどのような人かを想定することが必要だと述べました。
フレームワークに当てはめると、このユーザーの動機というのは
ゲーミフィケーションにおける「目的」にあたります。
目的とはゲーミフィケーションサービスの中でユーザーが目指すものになるので、
この目的がユーザーの動機と一致していないとユーザーは
サービスに対して意義を見出せなくなってしまいます。
ユーザーの動機を考えるにあたっては、バートルのプレイヤータイプのような分類や、
ユーザーが動機付けられるリワードの3分類などが有用とのことです。
ワークショップでは、ターゲットとするユーザー群を定め、
ユーザー像を深堀りするためにユーザーがサービスを利用するシナリオを考えていきました。
そしてその結果をもとにユーザーの動機を考えます。
ここで考えた動機はゲーミフィケーション施策全体の結果を左右するため、
本来は多くの時間を割くべきなのですが、今回はワークショップの限られた時間の中で
行う必要があるため、ある程度のところで仮説ベースで動機を絞り込み、
次の段階へと進むことにしました。
目的につながるアクション設計 ~可視化・目標要素~
次に考えるのは、ユーザーの動機=目的をいかに可視化し、
達成を実感してもらうかということです。
そのため、可視化の作業では目的を数値化し、様々な要素に分解することで、
目的に紐づいた指標を洗い出すという作業を行いました。
こうして洗い出した指標をもとに、サービス上の行動と組み合わせることで
目標要素の設定を行います。深田によると、目標要素に関連付けられるサービス上の行動は
先ほど洗い出した指標を上げるようなものである必要があるとのとこと。
さらに、難易度の設定、フィードバックの設定を行うことで、
ゲーミフィケーションの基本となるシステムを作っていきます。
これらの一連の要素はすべて最初に考えたユーザーの動機をもとに設計されます。
このような設計をすることによって、ユーザーの動機・目的・サービス上の行動・
フィードバックが矛盾なくつながるため、ユーザーが目的を見失うことを避け、
高いエンゲージメントを期待することができます。
当日は深田がこれらの設計手法をNike+や2ちゃんねるを例に詳しく説明していました。
もう一つのコミュニケーション ~ソーシャル要素~
目標を設定しフィードバックを返すという仕組みは、
いわばユーザーとサービスとのコミュニケーションであり、
1人プレイのゲーミフィケーションである、と深田は言います。
そこで、1人プレイの設計が一通り終わったら今度はユーザー同士のコミュニケーションである
ソーシャルな要素についても設計を行いました。
深田が指摘していたのは、ソーシャルアクションの順序という点です。
通常のサービスではユーザーがソーシャルな行動に慣れていないため、
いきなりハードルの高いアクションを要求しても受け入れてもらえない、
といったことが起こり得ます。
ですので、まずはハードルの低いアクションでほかのユーザーと
コミュニケーションをとるということに慣れてもらい、それからより緊密な
インタラクションを要求するアクションを徐々に導入していくといった
ソーシャルアクションの順序を考えることが必要になってくるのだそうです。
設計だけでは完成しない ~プレイサイクル、運用・改善~
最後にプレイサイクルの考え方とリリース後の運用・改善についての話がありました。
Nike+における行動サイクルの概念例(忠実に模式化しているわけではありません)
深田は、プレイサイクルデザインにおいては、ユーザーが行動を重ねて目的に近づいていく
サイクルのデザインや、ユーザーのサービスに対する習熟段階に合わせたバランス設計などを
考えなければならないと述べます。
特にサービス利用の初級者に対するチュートリアルが重要であるため、
ワークショップではチュートリアルに関するワークを行いました。
また、ゲーミフィケーションの設計が終わった後の運用・改善についても話題に上り、
ユーザーの動向仮説に基づいた仮説検証、それを行うためのKPIデザイン、
得られたデータをもとにした日々の改善の重要性について説明が行われました。
特に「リリース後の運用・改善はゲーミフィケーションの本質といってもいい」という発言からも、
ゲーミフィケーションは作って終わりではないというメッセージを感じることができました。
まとめ:ゲーミフィケーションのデザインで重要なこと
最後に、深田は今回のワークショップを総括した後で、
ゲーミフィケーションの今後の可能性を語るうえで「おもてなし」の概念について話しました。
深田の書籍やセミナーなどを聞いたことがある方にとっては、「おもてなし」というキーワードを
深田が重視していることはすでにご存じかもしれませんが、
今回のこのフレームワークにも「おもてなし」の概念が含まれているということが感じられました。
このフレームワークでは、最初にくるのはユーザーの理解であり、ユーザーの動機です。
そしてそのあとの設計でもこのユーザーの動機を中心に組み立てられていきます。
このように、まずユーザーがあり、ユーザーの気持ち・立場に立って考えるという
「おもてなし」に欠かせない要素が見て取れます。
また、特にプレイサイクルデザインや運用・改善の部分において、ユーザーの動向を考え、
測定し、地道に運用・改善を行うということからも、ユーザーとの一度限りでない
長期的な関係性の構築を志向していると言えるのではないでしょうか。
もちろん「おもてなし」という言葉に込められた意味というのはここにあげたものだけでは
ないとは思いますが、これらの要素はゲーミフィケーションを考えるうえで
重要な視点になるのではないかと思います。
ということで、当日の様子についてレポートさせていただきました。
紙面の都合上、細かい手法まで紹介することはできませんでしたが、
ゲーミフィケーション導入についての参考にしていただければと思います。
ゲーミフィケーション導入法については、今後も皆さんに共有する機会を設ける予定です。
イベントの情報などはGamification.jp(当サイト)またはFacebookページにて
随時紹介していきますので、今回参加できなかった方も是非チェックしてみてください!