こんにちは!YMです。
最近ではゲーミフィケーションという言葉がテレビで取り上げられるなど、
ゲーミフィケーションという言葉がますます注目を集めるようになったと思います。
同時に、Jane McGonigal氏が注目されたり、シリアスゲームやARGなどの関連する分野も取り上げられたりすることもありましたが、それらを見た方の中には「ゲーミフィケーションとシリアスゲームってどう違うの?」と思われた方も多かったのではないでしょうか?
今回は、この混同されがちな2つのワード、シリアスゲームとゲーミフィケーションの「違い」についてまとめてみたいと思います。
1.用語の定義
初めに、これらの用語がどのような意味で使われているかを確認しておきましょう。
まず、シリアスゲームですが、藤本 徹さんによる定義によると
「教育をはじめとする社会の諸領域の問題解決のために利用されるデジタルゲーム」
となっています。
(参考:【学びのキーワード】シリアスゲーム、 東京大学BEAT講座公開研究会資料)
次に、ゲーミフィケーションですが、
「プレイヤーを楽しませ、没頭させるためにゲームで使われている要素をゲーム以外の領域で活用すること」
こちらは、弊社深田が提示している定義です。
(参考:ゲーミフィケーション入門編)
特にゲーミフィケーションについては、これが一般的だと言える定義は今のところなく、
様々な定義がありますが、今回はこちらの定義をもとに進めていきたいと思います。
2.両者の違い
では、両者はどのように異なるのでしょうか?
定義を見ていただければ分かる通り、ゲーミフィケーションとシリアスゲームは本来「異なるレベル」に属する概念です。
なぜなら、シリアスゲームは、「社会の問題解決のために活用されるゲーム」という、ゲームの「ジャンル」であり、ゲーミフィケーションは「ゲーム要素のゲーム領域以外での活用」という「行為」あるいは「手法」を指すものだからです。
また、両者の目的と手段も大きく異なります。シリアスゲームは、社会の問題の解決こそが目的であり、そのための手段として「ゲーム」を使います。
一方でゲーミフィケーションは、目的は多様ではありますが、多くの場合特定の行動を活性化することや、サービスに対するロイヤリティ、エンゲージメントを高めることを目的とし、手段として「ゲーム要素」を使うものです。
ゲーム要素を使う、ということは、ゲーミフィケーションを適用したサービスが必ずしもゲームになるとは限りません。もちろん、ゲーム要素を突き詰めていってゲームと言っていいようなレベルになる可能性もあります。
3.両者の共通点
共通点は、どちらもエンターテイメント以外の目的にゲームを活用することです。
今までエンターテイメントが主目的だったゲームが、他の目的にも使えるのではないか、ということで現れたのが教育系ゲームやシリアスゲーム、アドバゲームです。
さらにゲームの「人々を夢中にさせる要素」を取り出して他のものにも応用できるのではないか、という考えのもとで現れたのがゲーミフィケーションであると言えます。
4.事例から見る違い
シリアスゲームとゲーミフィケーションの違いをより分かりやすくするために、いくつか事例を見てみましょう。
Sumusung Nationは、米国サムスンの自社サイトであり、サイト内での活動に対しバッジやポイントを付与する仕組みが取り入れられています。
このブログでも紹介しているため、詳しいことは当該記事をご覧ください。
これは典型的なゲーミフィケーションの例であり、ユーザのサイト内活動を活性化し、サムスンファンを増やすという目的のためにバッジやポイントといったゲームの要素(テレビゲームでは称号、経験値と呼ばれるものに相当します)を活用しています。
このように、ゲーミフィケーションの事例では、ゲームとはなかなか呼べないようなものも数多く存在します。
Food ForceはWFP(国連世界食糧計画)が企画した、世界中に人道支援の現状を知ってもらうためのゲームです。
(詳しくはこちら:今そこにある危機!人道支援を体験 フードフォース -All About)
こちらは人道支援に関する教育を目標にしたゲームであり、シリアスゲームに分類される典型的な例です。
・樹立(きりつ)の森 リハビリウム
こちらはリハビリをすることによって進行するゲームです。
(詳しくはこちら:【CEDEC 2011】Wiiを活用してリハビリを少しでも楽しいものに -GameBusiness.jp)
これはリハビリという行為を楽しいものにするために、ゲーム要素を付加しているという点ではゲーミフィケーションということができます。
一方でこれはゲームとしても成り立っており、また目的を見てもリハビリの促進ということで、ゲームとして区分するのであればシリアスゲームと言うことができます。
このように、シリアスゲームであり、ゲーミフィケーション(を適用した事例)でもある、という例も数多くあります。
以上からわかるように、シリアスゲームは「ゲームになっているか」、「社会問題の解決という目的があるか」という点でゲーミフィケーションや他のゲームと区別されます。
5.まとめ
ここまでの話をまとめてみましょう。
・シリアスゲームとは、社会の諸問題の解決を目的としたゲームを指す、ゲームのジャンルである。
・ゲーミフィケーションとは、ゲーム以外の領域で、利用者を楽しませるためにゲームの要素を活用する手法である。
・エンターテイメント以外の目的にゲームを活用する、という点では共通している。
以上が、シリアスゲームとゲーミフィケーションの違いのまとめとなります。
6.ゲーミフィケーションとゲームの関係
最後に、シリアスゲームを含めた「ゲーム」が、ゲーミフィケーションとどういう関係にあるのかを考えてみましょう。
ゲーミフィケーションは、ゲーム要素をゲーム以外の領域に活用するものです。つまり、ゲームで使われている表現の方法はゲーミフィケーションの手法としても使うことができます。ゲームを作ることとゲーミフィケーションを適用することは非常に似ている行為だといえます。
一方で、ゲーミフィケーションは従来のゲーム制作とは大きく異なります。現実の行動と関わっていかなければならないからです。現実にユーザの行動を促したりサービスを使いやすくしたりするためには、ゲームの内部で完結するわけにはいかないのです。
また、ゲームの要素をそのままゲーミフィケーションの手法として使えるとも限りません。特にサービスの改善のためにゲーミフィケーションを活用する場合には、そのサービスの本来の機能があるため、ゲームでは簡単にできたことができないということも考えられます。
ゲーミフィケーションは、何かをゲームにしたり、活動にゲームを取り入れたりすることよりも広い概念なのです。
このような違いがあるからこそ、ゲーミフィケーションは新しい手法として注目されているのではないでしょうか。
そして、シリアスゲームは、この違いに対応するにはどうすればよいのか、そのヒントを与えてくれるのではないかと思います。シリアスゲームもまた、現実の行動や問題をゲームの中に取り込む活動です。ARGのようなゲームと現実の関わり方もあります。
シリアスゲームやARGのやり方はゲーミフィケーションにも応用できます。シリアスゲームのノウハウは、ゲーミフィケーションの分野でも新たな手法を提供してくれるのではないでしょうか。